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  polly 4th Album『Hope Hope Hope』
2024.06.12 Release

1.See the light

2.ghost

3.ごめんね

4.Kikoeru

5.MORNINGRISE

6.K

7.Long Goodbye

8.Slow Goodbye(re-recording)

9.Monologue

10.Snow/Sunset

11.kodoku gokko

12.Lily

13.Mei

 

14HS-0005  14HOUSE.

Movie
Liner Notes

Liner Notes

 pollyのニュー・アルバム『Hope Hope Hope』をご紹介しよう。本作は2022年3月にリリースされた『Pray Pray Pray』に続く約2年3ヶ月ぶりの4作目のフル・アルバムだ。pollyは2022年4月17日のライヴをもってギタリストとベーシストが脱退、同年7月に後任として志水美日(Key,Cho)が加入、越雲龍馬(Vo,G,Prog)、高岩栄紀(Ds)、志水の3人編成になっており、本作はメンバー・チェンジ後初のアルバムということになる。バンドは新体制で2023年5月10日に5曲入りEP『Heavenly Heavenly』を、同年10月にシングル「Monologue」を、2024年2月から4ヶ月連続で「kodoku gokko」「Long Goodbye」「See the light」「Lily」という4曲のシングルを発表、さらに本作リリース直前には「ghost」もリリースしており、それらはすべて本作『Hope Hope Hope』に収められている。さらにもう1曲、2020年発表のセカンド・アルバム『Four For Fourteen』に収録されていた「Slow Goodbye」が再録されて収められている。

 言ってみれば2022年のメンバー・チェンジ以降のpollyの集大成とも言えるアルバムであり、この2年余りの彼らの音楽的な変遷をそのままドキュメントした作品と言えるだろう。こうした制作・発表過程は、音楽制作においてストリーミング配信が当然の大前提のインフラ環境になって以降、アルバム制作の意味合いや実態が大きく変わった状況を反映してもいる。

 リメイクの1曲を含め、すべての楽曲が耳にしたことのあるものばかりであり、彼らの歩みを見続けてきた者には深い馴染みのある音が鳴っているわけだが、それ以上に本作には、聴く者の郷愁や深く宿った記憶を喚起せずにはいられない、ある種のエモーショナルな衝動が宿っているように思える。それはメランコリックで美しいメロディと越雲のファルセットを使った繊細なヴォーカル、キーボードを効果的に使ったアトモスフェリックで空間的な広がりをもったソフト&メロウなサウンドのイメージもあるし、そして別れや喪失、失われたものへの愛惜と悲哀、空虚といったものについて歌われた歌詞からくる印象も大きい。そしてそれは、pollyの表現の底流に常に流れ続けてきたものであるように思える。

 本作の制作は、これまで通り、基本的にソングライターである越雲龍馬がDTMで制作したデモをもとに3人が演奏しレコーディングするという形式で行われた。越雲によれば、キーボード奏者がバンドに加わることで、アレンジの自由度が増しpollyの個性を確立できたのではないかと言う。「ノイジーなギターのなかに美しいピアノのアルペジオがあることが、我々の新しいアイデンティティーになるんじゃないか。ちゃんとピアノの音がノイジーななかに鳴っているバンドって、本当に僕が知っている限り日本にはいないんじゃないかと思っているので。それがすごい新しいなと思いましたし、バンドとしてのアイデンティティーというかオリジナリティになっていくんじゃないかと」(『Heavenly Heavenly』時のインタビューより。聞き手=筆者)

 『Heavenly Heavenly』収録曲(⑤③⑩⑥④)ではフレージングやプレイのニュアンスにおいて各メンバーの意思を活かすような形でレコーディングが行われたようだが、ほかの曲では越雲の制作したデモを忠実に再現するようなプレイに徹していて、他メンバーの意思やセンスはそこに投影されていない。それは時間的な制約がありメンバーとのすり合わせが十分にできなかったこともあるだろうし、それ以上に今作は越雲の個人的な感覚や感情、体験や記憶を作品に投影させ、定着させることを重視したという事情がありそうだ。

 越雲は前出の『Heavenly Heavenly』時のインタビューで、「『Pray Pray Pray』からの流れはベーシックとして置いておいて。このフォーマットは我々はもう、いつでもできるので、今後は違う音楽性というか、新しいものを考えていきたい」と語り、次作について「もうちょっとヒリついた、ポスト・パンク色の強いものを作りたいという気持ちがある」と語っている。だが聴いていただいた通り、本作はそういう作品にはなっていない。強いて言えば「kodoku gokko」はそうしたテイストを感じさせる楽曲で、2分足らずのダークな疾走感のある演奏は、聞き手に鋭い言葉の刃を突きつけてくるかのような、あるいは越雲自身への厳しい問いかけのようでもあり、アルバム全体にメランコリックな感情の揺れを歌う曲の多い中で、一種の異化効果をもたらしてもいる。だがやはりアルバム全体は、これまでのpollyのメランコリックなサウンドをひたすら純化して結晶化したような美しい楽曲集という印象が強い。このライナーノーツのため越雲にメール・インタビューを行ったが、そこで彼は「もともとポスト・パンク的な曲を作っていたが、1枚フルアルバムをリリースしてからの方が説得力が増すと思ったから」と理由を述べている。これは越雲自身の内心のさまざまな葛藤、苦悩や孤独といった繊細で傷つきやすい感情を、ここでどうしても形として表しておきたかった、表さずにはいられなかった、ということではないかと思われる。

 前出の越雲のメールインタビューによれば「今作の制作中の自分の精神面はとても弱っていて、自分の存在価値や自分の死について何度も考えていました」という。自分のアイデンティティが揺らいでしまうようなネガティヴで陰鬱な感情に苛まれ、ベッドから起き上がれなくなってしまうような重苦しい日々を、せめて本作のような優しく包み込むような柔らかくドリーミーな音で癒したい、そんな思いがあったのかもしれない。

 pollyのライヴを体験したことのある人なら誰でも、そしていつも見る光景がある。自分たちを見守ってくれるオーディエンスに自分の素直な思いや感情を伝えられる醍醐味、自分の精一杯の表現が聞き手に共有される喜びを噛みしめつつも、その夢のようなひとときが、いつか終わることを思ってしまう。いつまでもこの楽しさが続くことを願いながらも、でもついつい終わるときのことを考えてしまう。越雲のそんな一言を、ライヴのたびに我々はいつも聞いている気がする。楽しいパーティーであればあるほど、幸せな時間であればあるほど、終わったあとの寂寥感や別れのあとの悲しさ、取り残された空虚感を思ってしまう。そんな気持ちは、痛いほどわかる。たぶん越雲と私は同じだ。だが私は越雲より人生経験を積み、年齢を重ねたぶん、面の皮が厚くなり、自分の痛みや空虚を麻痺させる術を知っているだけの話だ。それが「強くなる」ということなのかもしれないが、でもそうじゃない自分がいる(いた)こともよく覚えている。そんな感情を、pollyは掘り起こしてくれる。それがたぶん、pollyの音楽の放つ、ある種の強力なノスタルジーなのだと思う。

 越雲に何があったのか、具体的なことはわからない。もしかしたらそれは彼に宿痾のようにまとわりつくものなのかもしれない。だがメンバーはそんな彼の気持ちに寄り添うような的確で優しい演奏で応えている。先日見たライヴでは、志水の奏でる美しい音色(おんしょく)と、高岩の力強いリズムがとりわけ印象に残った。志水と高岩は、越雲の表現を明るい光の射す方向に導くような、そんなエネルギー源の役割を果たしているのだろう。

 越雲は2024年5月10日付けのXで「以前は、自分がここから居なくなったら作ってきた音楽も同じようになくなった方が良いと思っていた。今は、音楽だけは残り続けて欲しいと思う。」と投稿している。自分という存在が消え、いつか忘れ去られても、楽曲だけは生き続け、残り続け、聞き続けられる。音楽家にとってこんな幸せがあるだろうか。音楽が、音楽だけが彼の生きてきた証だ。それは間違いなく「Hope Hope Hope」と名付けられたここに刻まれている。

 

2024年5月23日  小野島 大  Dai Onojima

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Live

Release Tour

2024.07.16(TUE) 東京Zirco Tokyo

<Guest> DOGADOGA

OPEN18:30/START19:00

前売4,500円/学割2,500円(drink別)

チケット:e+ https://eplus.jp/polly/

Purchasing Tickets from Overseas https://ib.eplus.jp/polly2024

 

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2024.08.06(TUE) 大阪SOCORE FACTORY

2024.08.08(THU) 福岡OP's

2024.08.23(FRI) 愛知:名古屋ell.size

 

TOUR FINAL ONEMAN

2024.09.27(FRI)  東京大塚Hearts+

 

〈8月9月公演詳細は後日発表〉

 

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